🥐第44回 「フランスの高校生のデモ、パリではどんな状況なのか?」

名門アンリ4世高校も連帯した、フランスの高校生による抗議運動。教員不足や校舎の問題を訴える彼らには、組合も、生徒の声を届ける制度もある。それでも、なぜ学校を止めるのか?高校生組合の歴史とパリの抗議マップから、学びたいのに授業が失われる矛盾を考える。
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コモサバ
2026/10/03


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10月2日 閉鎖された高校。


☕ イントロダクション

学校前で火が上がる。生徒や教職員の安全が脅かされ、学校が閉まる。

フランスの高校生の抗議運動は、深刻な暴力を伴う局面に入っている。

これを受けて、教育相は10月1日、翌日にフランス全土で、400校余りを閉鎖すると発表した。

LCP:Lycées bloqués: interdiction de manifester autour des 400 établissements fermés vendredi

面白いのは、

パリ5区のアンリ4世高校でも連帯行動が報じられた点。

アンリ4世高校といえば、フランスの中ではかなりの名門校。

Le Mondeの取材では、恵まれた立場を自覚する生徒たちが、ほかの高校の状況を問題にしているという。

Le Monde :A Henri-IV, dans le centre parisien, les lycéens solidaires face aux « discriminations sociospatiales »

今回は、このフランスの高校の仕組みと、実際パリのどこで抗議運動が起きたのか?を探ってみた。


✉️ このニュースレターは…

「これから、フランスはどうなっていくのか?」

既存メディアや一次資料からフランスの社会事情を読み解き、「だから今、何を考え、何をすべきか」を探るニュースレターです。

シリアスなフランス語ニュースも日本語で味つけ。蓋を開ければ「酒の肴」──そんな鯖缶のような通称「鯖刊」です。


✊フランスには、高校生の段階からsyndicat(組合)がある!

さすが、労組の国、フランス。

その芽はすでに高校から蒔かれているのかもしれない。

フランスには、なんと高校生自身が参加する「組合」があるのだ。

今回の抗議運動で全国に行動を呼びかけた「高校生組合連合(USL)」も、その一つ。

「先生が足りない」「校舎がボロボロ」「進学制度に納得できない」。そんな生徒たちの声を集め、学校や政府に改善を求める。

ただし、各高校に必ず組合があるわけではない。学校の枠を越えた団体に、生徒が加入する仕組み。

デモを呼びかけ、教育相との交渉にも臨む。高校生のうちから、仲間と組織をつくり、社会に声を届ける手段があるのだ。

有名どころではこの3つ。

  • USL:高校生組合連合
  • MNL:全国高校生運動
  • FIDL:独立民主高校生連盟

(小さな地域限定の団体や、連合に加盟する団体まで数えるとさらに増える)

今回のデモを受けて、USLは、10月2日、午後2時から、教員不足や学習環境の改善を求め、教育相との協議に臨む予定だ。


🌱学生の組合のルーツ

時は1967年。

高校生が「高校生行動委員会(CAL=Comités d’action lycéens)」を結成。

ベトナム戦争への反対や、厳格な学校管理への反発を背景に、1968年5月の運動にも参加。

これが高校生が自分たちで組織をつくる先駆けとなる。

ちなみに、1968年5月の運動とは、別名、五月革命(Mai 68)」と呼ばれる、1968年5月にフランス全土へ広がった大規模な抗議運動。

「権威に一方的に従う社会を変えたい」という反発と、「働く人の待遇を改善してほしい」という要求が重なった運動で、約1,000万人が参加する全国的なストライキに発展した。

その後の1986年、

大学入学時の選抜などを進める「Devaquet法案」に、高校生と大学生が大規模に抗議。法案は撤回され、その運動を受けて翌1987年にFIDL(Fédération indépendante et démocratique lycéenne)、独立民主高校生連盟が誕生。

1994年には、UNL(Union nationale lycéenne)、全国高校生連合が誕生した。

私立学校への公的援助をめぐる法改正への反対など、教育をめぐる運動の中で組織化が進んだのだ。

2016〜2019年にかけて、UNLから分かれた団体が、2019年にMNL(Mouvement national lycéen)、全国高校生運動へと名称を変更。

2023年、複数の高校生団体や活動家が集まり、USL(Union syndicale lycéenne)を発足。

今回の運動では、このUSLが全国への参加呼びかけを担い、教育相との協議に臨んだ。


⏳相談するより、学校を止めた方が早い?

校内で生徒の声を届ける仕組みはある。

日本の生徒会に近い役割を持つ、

CVL=Conseil des délégués pour la vie lycéenne

(高校生活評議会)は、生徒代表が教職員や保護者と、話し合う。

ただし、そこは校内の話。

「話を聞いてもらう」と「問題が解決する」は別の話。

たとえば、パリの高校で、

「トイレが壊れているから直してほしい」と訴えたとする。

小さな修理なら学校で対応できる場合もあるが、大がかりな改修は主に地域圏、つまり Île-de-France の担当。

また、「先生が足りてない」という要求なら、それは国の教育行政に関わる。

学校側が生徒の言う通りだ、と思っても、必要なお金や人を、その場ですべて用意できるわけではない。

しかも、生徒には卒業がある。

「改善します」と言われても、行政が動くまでに学校を去ってしまうこともある。

相談しても、その後どうなったかわからない。

そんな状態が続けば、

生徒は「力ずくで学校を止めた方が動いてくれるのでは?」と考えても不思議ではない。

もちろん、これは制度から考えられる可能性だが、

発言の場に加えて、「誰が、いつ、どう対応するのか」が見えないことに対する、生徒たちのフラストレーションも垣間見える。


🗺️パリ市内の学校ストライキマップ


B高校のデモ画像 2026年10月2日 10_33_30.png.webp

この地図では、赤丸は10月2日の集会禁止に関する警視庁通達の対象13校、濃い青丸9校は、それ以前にデモがあった高校を地図へ掲載した。


🔵 濃い青丸の高校:9校

  • 1:Montaigne(モンテーニュ高校)―6区
  • 2:Hélène-Boucher(エレーヌ・ブシェ高校)―20区
  • 3:Gaston-Bachelard(ガストン・バシュラール高校)―13区
  • 4:Beaugrenelle(ボーグルネル高校)―15区
  • 5:Turgot(テュルゴ高校)―3区
  • 6:Henri-IV(アンリ4世高校)―5区
  • 7:Carnot(カルノー高校)―17区
  • 8:Voltaire(ヴォルテール高校)―11区
  • 9:Arago(アラゴ高校)―12区


🔴 赤丸の高校:13校

  • 10:Henri-Bergson(アンリ・ベルクソン高校)―19区
  • 11:Pierre-Lescot(ピエール・レスコ高校)―1区
  • 12a・12b:Simone-Weil(シモーヌ・ヴェイユ高校)―3区。12aはPoitou、12bはTruffautの拠点
  • 13:Chaptal(シャプタル高校)―8区
  • 14a・14b:Edgar-Quinet(エドガール・キネ高校)―9区。14aはMartyrs、14bはDuperréの拠点
  • 15:Colbert(コルベール高校)―10区
  • 16:Turquetil(テュルクティル高校)―11区
  • 17:Caroline-Dorian(カロリーヌ・ドリアン高校)―11区
  • 18:Marcel-Deprez(マルセル・ドプレ高校)―11区
  • 19:Élisa-Lemonnier(エリザ・ルモニエ高校)―12区
  • 20a・20b:Jean-Lurçat(ジャン・リュルサ高校)―13区。20aはGobelins、20bはPatayの拠点
  • 21:Drouant(ドルーアン高校)―17区
  • 23:Martin-Nadaud(マルタン・ナドー高校)―20区


ここ、一週間の動きから、赤丸の高校は、通達によって、学校が強制的に閉鎖された。

濃い青丸の高校でも、強制閉鎖は言い渡されなかったものの、デモが行われたという事実がある。

地図をみると、パリ右岸に集中している。

近くを通る際は、気をつけてください。


📅来週も続く可能性

来週も高校生による抗議や学校封鎖が続く可能性は高い。

すでに継続の呼びかけが出ている。

今日10月2日、USLなどの代表は教育相と実際に面会した。

しかし、団体側は「具体的な措置が得られなかった」として、運動の継続と来週10月6日(火)の全国的な抗議行動「第3幕(acte III)」への参加を呼びかけている。

ただし、どの高校が、何日に封鎖されるかは、各校の動き次第。


🍸エピローグ

足りなかった教員は来たのか。生徒の要望に、具体的な返事があったのか。

何も変わらず、説明もないままなら、同じ不満がまた封鎖につながる可能性は残る。

教員が仕事を休む「スト」。

生徒が入口をふさぐ「封鎖」。

安全のために国側が決める「閉鎖」。

今回、生徒たちが求めているものの一つは、学校で十分に学べること。

そのために学校を止めれば、また授業が失われる。この矛盾は、簡単には消えない。

だからこそ、封鎖が終わった後は見もの。

生徒たちの記憶に残るのは、「止めたら、やっと大人が動いた」という経験だろうか?

それとも、「話し合い、返事をもらい、学校を変えることができた」という経験だろうか?

フランスの学校の現状は確かに年々悪化している気がする。

次に大人が何をするか。それを、生徒たちは見ている。




🤓ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。

黄色いベスト運動と同じく、ドサクサに紛れて悪い事をする生徒がいることが問題なんですけどね。

モノを壊す、火をつける、警官に暴力を振るうなどなど。

念のため、来週も注意していきましょう。


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参考資料:

L’Étudiant :Les principaux syndicats lycéens s’unissent et créent l’Union syndicale lycéenne

Persée :Mai 68 et le mouvement lycéen

Le Monde :Mai 68, la chronologie des événements qui ébranlèrent la France

INA :Le 6 décembre 1986, la mort de Malik Oussekine

Le Monde :La FIDL et l’UNL, les deux syndicats de lycéens

MNL :À propos — Notre histoire

Ministère de l’Éducation nationale :Les représentants des élèves au collège et au lycée

Ministère de l’Éducation nationale :Vie lycéenne

Légifrance :Code de l’éducation — Article L214-6 : les compétences des régions concernant les lycées

Légifrance :Code de l’éducation — Article L211-8 : les dépenses d’éducation à la charge de l’État

Le Monde :Blocage des lycées : forte mobilisation, violences et dégradations, mouvement reconduit… Ce qu’il faut retenir de la journée de vendredi

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