🥐第43回 「黄色いベスト運動とは何なのか?ガソリン高騰で再燃の危機?」

燃料高騰で再び揺れるフランス。7年前の「黄色いベスト運動」はなぜ異質だったのか――そして今、瞬発型デモ2.0は本当に起きるのか?
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コモサバ
2026/09/26


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☕ イントロダクション

フランスで、しょっちゅうデモが起こるのは、もう有名な話。

しかし、7年前に起きた「黄色いベスト運動」、

フランス語ではジレ・ジョーヌ(gilets jaunes)、

あのデモ行進は異質だった。

暴力的で、破壊的。フランス社会を揺さぶった。

いつものデモ行進と、いったい何がちがうのか?

ちょっと興味がそそられた。


✉️ このニュースレターは…

「これから、フランスはどうなっていくのか?」

既存メディアや一次資料からフランスの社会事情を読み解き、「だから今、何を考え、何をすべきか」を探るニュースレターです。

シリアスなフランス語ニュースも日本語で味つけ。蓋を開ければ「酒の肴」──そんな鯖缶のような通称「鯖刊」です。


🛢️7年前もガソリンの高騰がキッカケ


今年、もしかすると「黄色いベスト運動」が再発か?

と言われるのは、燃料の価格が高騰しているからに他ならない。

黄色いベスト運動の時は、政府が、燃料(炭素)税の引き上げを発表して、フランス国民の怒りに火をつけた。

今回は、この燃料税を引き下げるかどうかが注目されている。

2026年9月23日のフランスでのガソリン価格の平均は、

SP95-E10が 2.172€/L、(約389円/L)

ディーゼルが 2.410€/L、(約432円/L)

(SP95-E10=日本でいうレギュラー、1ユーロ180円として概算)

そのうち税金の割合は、

燃料税 + 消費税(20%)で

SP95-E10:約1.03€/L(約186円)=販売価格の約48%

ディーゼル:約1.01€/L(約182円)=販売価格の約42%

約半分が税金。

もし、政府が税金を引き下げるとしたら、消費税は動かせないので、燃料税の方を動かすことになる。

ここで、もし、価格を、

SP95-E10を1.90€、

ディーゼルを2.10€、

高騰直前価格ぐらいまで下げるとしたら、

燃料税はSP95-E10は34%、ディーゼルは43%下げる必要がある。

政府はまだ、この全面的に燃料税を引き下げる方針には踏み切っていない。

今のところ、「よく車を使う人」への支援や燃料手当を拡大するなど、対象を絞った援助が中心。

う~ん、財政が火の車のフランス政府が、燃料税引き下げに踏み切る確率は低い気がしてくる。


💪 フランスに脈々と続く「交渉型スト」の伝統

フランスで、なんでこんなにデモやストが多いのかというと、もともと「交渉の手段」として位置づけられてきたから。

政府や企業に圧力をかけ、妥協や譲歩を引き出す、それが目的。

実際、7年前の黄色いベスト運動では、ガソリン・軽油などへの炭素税引き上げが、最終的には撤回された。

過去にも、シラク大統領時代の大学改革・Devaquet法案や、2006年の26歳未満の若者への初回雇用契約法案などがデモやストによって撤回されている。

つまりフランスでは、ストは単なる「不満の爆発」ではなく、政府と市民のあいだの交渉テーブルに乗せるための圧力装置として機能してきた。

フランス国民は、この成功体験を何回か経験しているのだ。


🏳️‍🌈ふだんのストは、労組が中心

ふだんフランスで行われるデモやストは、教育関係、鉄道関係、医療関係といった職業団体が労働組合の旗の下に集まり、組織的に動員される場合が多い。

人権や社会問題を訴えるデモでは、労働組合だけでなく、さまざまな団体やアソシエーションが呼びかけ役になる。

こうしたデモは、日時や集合場所、行進のルートなどをあらかじめ決めて、行政当局に届け出たうえで行われるのが一般的。

この場合、デモに参加しない人や、セキュリティのために動員される警察や機動隊などもあらかじめ準備ができる。

多少の混乱は避けられないにせよ、あくまで政府や企業などに要求を伝え、圧力をかけるために、あらかじめ組織された集団行動だ。

つまり、良くも悪くも「いつ、どこで、誰が、何を訴えるのか」が見える。

💥じゃあ、黄色いベストは何が違う?

黄色いベスト運動の発端はSNSだった。

燃料価格に怒った、ごく普通の市民が、ネット上で始めた署名や動画、Facebookへの書き込みが、ついには約28万人、フランス全土で一斉に行動に出るという現象に発展。

労組のような司令塔もいなければ、ガソリン高騰に異議を唱えたい人なら誰でも参加できた。

そんな条件が重なって、運動は爆発的に広がっていったのだ。

通常のデモなら、警察もあらかじめ日時やルートを把握して準備できる。

しかし黄色いベストでは、

「どこで、誰が、何人集まり、何をするのか」が、直前まで分からなかった。

実際、最初の大規模行動となった2018年11月17日、

全国で約1,500件の行動が予想されていた。

しかし、事前に届け出られていたのは、わずか100件あまり。

しかも彼らが集まったのは、いつものデモのような都市中心部の大通りだけではない。

地方のロータリーや、高速道路の料金所、幹線道路、ショッピングセンターの入口などなど。

Facebookを見た市民が、それぞれの町で、それぞれ勝手に集まった。

つまり警察から見れば、フランス全土で大小さまざまなデモが、同時多発的に勃発するような状態。

さらに厄介なのが、

交渉しようにも「代表者」がいないこと。

先導者は全国に多数存在する。

政府が誰かと話をつけたところで、その人の決定に全国の黄色いベストが従うわけでもない。

この「司令塔がいない」という特徴こそが、黄色いベスト運動を急速に巨大化させた要因であると同時に、政府や警察にとって非常に対応しにくい運動にしたのだ。


🧨そしてもっとも厄介だったのが、デモに紛れる『ブラック・ブロック』


『ブラック・ブロック』は、黒い服を着て、顔を隠し、その場で集団をつくり、警察との衝突や建物、店舗などの破壊を行ったあと、再び群衆の中に散っていく。

いわば、組織の名前というより一つの戦術に近い。

実際、「ブラック・ブロック」という統一された組織や指導者が存在するわけではない。

しかし黄色いベスト運動でもっとも問題視されたのが、この「ブラック・ブロック」がデモに紛れていたこと。

警察にとって、非常に対応しにくい現象だった。

黄色いベストのデモは、そもそも従来の労組デモのように、主催者が決めたルートを整然と行進するものばかりではない。

大勢の人が脇道へそれたり、いくつもの塊に分かれたり、突然別の通りに現れたりする。

「え?こんなとこも通っていくの?」

当時、職場の近くを黄色いベストの一団が通り過ぎていったのを、私も覚えている。

さらに、誰が普通の参加者で、誰がこれから暴れるのか、外から見ただけでは、簡単には区別できない。

2018年11月末から12月にかけて、パリでは事態が一気に激しくなった。

シャンゼリゼでは、あの石畳をはがして建物、警察に投げつけたり、車やごみ箱が燃え、店舗などが破壊され、凱旋門も被害を受けた。

そして、暴れた人たちが全員「ブラック・ブロック」だったわけでもなく、

当時の報道では、現場には極左・極右の活動家や、単に破壊行為に便乗した「casseurs(壊す人)」など、さまざまな人間が混在。

「誰でも参加できる」黄色いベスト運動は、暴力を目的とする人間まで入り込める余地を作ってしまっていたのだ。

これによって運動は

「燃料税に反対する庶民のデモ」

というだけでは語れない、よりカオスな運動へと変わっていってしまった。


これが、黄色いベスト運動を世界的に有名にし、

「フランス、大丈夫?!」

と海外まで心配するほどの騒ぎになった理由でもある。


📱燃料高騰で黄色いベスト再来か?

Le Mondeの記事によると、

2026年10月17日に「黄色いベストを復活させよう」という呼びかけがTikTokなどで急速に広がっているという。

燃料高に怒った若い男性がTikTokで「10月17日なら土曜日だし休暇中だから、みんな来られる」と投稿した動画が約150万回再生され、そこから日付だけが独り歩きした可能性があると報じられている。

AIで作った複数の「全国動員」のポスターまで大量に出回った。


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2018年の黄色いベスト運動は、

「瞬発型デモ」だった。

しかし、今回、もし、それが起きるとしたら、

「瞬発型2.0」みたいなものになる可能性があるという。

どういうことかというと、2018年は、同じSNS が発祥とは言え、一応誰が始めたか、は本人が名乗り出ているので分かっていた。

しかし、今回は誰が始めたのかさえ分からなくなっている。

Le Mondeによれば、今回の10月17日については、前回の黄色いベストの一部から逆に「誰が始めたのか分からないし、怪しいから行くな」という声が出ているという。

さらに、社会学者アントワーヌ・ベルナール・ド・レーモンはRTLで、2018年と同規模・同形式の運動が再現される可能性には懐疑的だと述べている。

理由の一つは、2018年の黄色いベストには「誰も予想していなかった」という奇襲性があった。

しかし現在は政府もメディアも最初から「黄色いベストが戻るか?」と警戒しているため、奇襲性の効果がない。

さらに決定的に違うのは、怒りの矛先。

2018年は、「政府による燃料税引き上げ」だったため、標的は政府。

でも今回は、
中東情勢などによる世界的な原油・供給危機。

つまり「フランス政府だけが直接の原因ではない」ため、標的が若干曖昧だ。

とはいえ、政府自身はかなり警戒している。

Matignon(首相府)は黄色いベスト再来を警戒して、漁業者、農業者、長距離通勤者などへの燃料支援を延長した。

🍷エピローグ

フランスは確かに10月17日(土)から、11月1日(日)まで、学校が秋休みになる。

それに合わせて、家族休暇をとって、どこかに出かけるフランス人もいるだろう。

「10月17日なら土曜日だし休暇中だから」という呼びかけは、まさに秋休みの初日を狙っている。

はたして「黄色いベスト運動」は再発するのだろうか?

家族休暇で計画していた旅行や滞在が、デモやストの影響を受けないことを願いたいところです。


🤓ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。

7年前の黄色いベスト運動、確かに異色なデモでした。

結局、ドサクサに紛れて悪い事をする人たちがいることが問題なんですけどね。

念のため、10月17日には注意していきましょう。

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参考資料:


Le Momde:Les « gilets jaunes » de retour le 17 octobre : itinéraire d’une rumeur née sur TikTok

RTL:"Le mouvement a réussi parce qu'on ne l'attendait pas" : pourquoi un retour des Gilets jaunes comme en 2018 semble improbable

Le Monde:Carburants : la grande valse des propositions pour freiner l’envolée des prix, entre blocage et baisse des taxes

Le Monde:Carburants : le gouvernement annonce des aides pour les « grands rouleurs », les infirmiers, les aides à domicile et les pêcheurs

IEA:Oil Market Report – September 2026

Roole Média:Prix des carburants : voici les tarifs en France ce mercredi 23 septembre 2026

douane.gouv.fr:Tarif de l’accise sur les énergies – Année 2026

economie.gouv.fr:Où trouver le prix des carburants près de chez soi ?

Le Monde:17 novembre : comment se profile la mobilisation « gilets jaunes »

INA:Les Gilets jaunes : comment tout a commencé en 2018 ?

Le Monde:Black blocs : une tactique de lutte plus qu’une idéologie

Le Monde:Les « gilets jaunes », un casse-tête pour le maintien de l’ordre

Vie-publique:Déclaration de M. Édouard Philippe, Paris le 4 décembre 2018.

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