🥐第35回「15歳未満SNS禁止法、9月1日施行。でも『どうやって禁止する』のか?」
☕イントロダクション
コモサバ=フランスに長期生息中のサバ
K子(ケイコ)=その友人でニュースオタク
コモサバ:
15歳未満SNS禁止法、ついに決まったって言ってましたよね。9月から、15歳未満はTikTokもInstagramも禁止?
K子:
いや、7月21日、国民議会と上院は法案を最終採択したが、その後の7月23日以降、60人以上の議員によって憲法院へ『憲法違反がないか審査してほしい』と提出された。
最終条文では、新しく作るアカウントは9月1日から、既存アカウントは4か月後から対象になると報じられた。
しかし、憲法院がどう判断するのか、年齢確認をどのように実施するのかによって、予定どおり動くかは分からない。
前回の記事「フランスの15歳未満SNS禁止法は『効く』のか?」では、禁止を実行するための「年齢確認」という入口に注目した。
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今回は、その後の審議で見えてきた、もっと奇妙な話である…。
🧭30秒で分かる現在地
- 15歳未満によるSNSへのアクセス禁止が最終採択された。
- しかし憲法院で審査中で、まだ公布・施行されていない。
- フランス法だけでは、海外に拠点を置くプラットフォームへ新たな義務や罰則を課しにくい。
- 対象サービスの明確な一覧がない。
- 年齢確認を誰が、どの方法で行うのかも固まっていない。
- 子どもを守るという目的には広い支持があるが、方法をめぐって意見が割れている。
📌この記事を読むと分かる、7つの疑問
- 🚧禁止なのに、なぜ罰則も実行役も見えないのか?
- 📜EU法を守ると、フランス憲法にひっかかる?
- 🧯禁止だけ残って、「やめられなくする仕組み」への規制は消えた?
- 📱YouTube、WhatsApp、RobloxもSNSなのか?
- 🐨6か月経ったオーストラリアの禁止は、成功したのか?
- 🚸フランスの子どもたちは、賛成なのか、反対なのか?
- 🏠SNSが居場所だった子どもは、禁止後どこへ行くのか?
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🚧禁止なのに、国内の罰則がない?
最終条文の中心は、とても短い一文だ。
「オンライン・プラットフォームが提供するSNSへのアクセスを、15歳未満の未成年者に禁ずる」
コモサバ:
ずいぶん言い切ってますが。
K子:
言い切ってはいるが、その子どもがアクセスした場合、本人や親に罰金が科されるとは書かれていない。
プラットフォームが止めなかった場合に、フランスの当局がこの法律だけを根拠として直接制裁する仕組みもない。
当初、監督役として期待された*Arcomの名前も、最終版から外れた。
(*Arcom(アルコム): フランスの「メディアの監視役」。テレビやラジオの放送ルールを守らせたり、ネット上の違法動画や偽情報を規制したりする公的機関。)
しかも、どんな方法で本人確認をするのかもはっきり決まっていない…。
コモサバ:
じゃあ実際に、13歳の子が9月にTikTokで新しいアカウントを作ったら?
K子:
Public Sénatが取材した法律家たちの答えは…
「現状では、何も起きない。」
理由はEUのDSA(デジタルサービス法)だ。フランスは「15歳」という年齢線を決められても、アイルランドなど他国に本社を置く巨大プラットフォームへ、独自の確認義務や制裁を自由に足せない。
ここに一つ目の疑問がある。
『禁止法なのに、禁止を実行させる国内の仕組みがない。』
参考文献:
Public Sénat:Interdiction des réseaux sociaux aux moins de 15 ans : une loi impossible à appliquer ?
📜EUに合わせたら、今度はフランス憲法で危なくなった?
EU法に合わせて権限を削った結果、今度は憲法上の問題が残った。
LFIの議員らは、全面禁止が表現・通信の自由と私生活の尊重を侵害するとして憲法院に申し立てた。
未成年者であっても、SNSへのアクセスは「情報を受け取り、発信する自由」の一部とみなされる。
全面禁止が、自由を制限するやり方として「本当にそこまでやる必要があるのか」「やり過ぎじゃないか」が、まさに議論の焦点になっている。
EUには「フランスが勝手にやりすぎ」と言われ、国内では「禁止の範囲が広すぎる」と問われる…
コモサバ:
EUと国内で板挟み?
K子:
「EU法を越えないこと」と「自由を制限しすぎないこと」で、板挟みというより、八方塞がり。
ここが二つ目の疑問。
『EU法を守ると、今度はフランス憲法に触れる可能性がある』
これで、この法案は本当に回るのか、疑わしい…。
参考文献:
🧯禁止だけ残って、「やめられなくする仕組み」への規制は消えた?
法案の初期段階では、年齢制限で一律禁止以外の対策も提案されていた。
未成年向けの推薦アルゴリズム、広告、過度な商業的圧力、SNSの危険性を知らせる表示など。
しかし審議を重ねた最終案では、こうしたフランス独自の規定の多くが削除された。
主に残ったのは、「15歳未満は入ってはいけない」という入口のルールだけ。
だが、SNSの問題は入口だけだろうか。
無限スクロール、自動再生、頻繁な通知、「あなたへのおすすめ」が途切れなく出てくる仕組み。
大人でさえ、「猫の動画を一本だけ」のつもりが、気づけば2時間以上たっていたり。
コモサバ:
これはありますね。知らない間に時間が溶けるっていう…。
K子:
EUでは、こうした利用者を長く引き留める設計そのものを問題にする動きが進んでいる。
しかし、今回のフランス法は、子どもの行動を禁止する一方で、企業が作った「離れにくい仕組み」への独自規制を薄くした、とも読める。
ここが三つ目の疑問。
『15歳未満を入口で止めても、15歳になった翌日にはドアが開く。でも、中の仕組みがそのままで、法規制の効果があるのかどうか。』
📱そもそも、どこからがSNSなのか?
TikTok、Instagram、Snapchat、X。ここまでは分かりやすい。
では、YouTubeは?
WhatsAppのチャンネルは?
Robloxの交流機能は?
Redditは?
最終法には、対象サービスの一覧がない。
オンライン百科事典や教育・科学系の一部は例外とされたが、SNSの定義はEU法の広い言葉に委ねられている。
コモサバ:
子供に「WhatsAppは禁止? YouTubeは見るだけならいい?」と聞かれても、答えられないじゃないですか。
K子:
法案提出者は、YouTubeなら投稿や共有、WhatsAppならチャンネルなど、サービス丸ごとではなく「SNS的な機能」だけを年齢確認の対象にする可能性を示している。
コモサバ:
アプリは禁止じゃない。でも、アプリの中のこの扉は15歳未満禁止?
そんな複雑な仕組み、できるんですか?
K子:
そこが四つ目の疑問。
『対象サービスの一覧がない中で、SNS的な機能の定義をどうする気なのか』
参考文献:
🐨豪州では、禁止後も利用があまり減らなかった?
先陣を切って16歳未満のSNS利用を禁止したオーストラリア。
施行から半年後、16歳未満が持つアカウントの数は37%減ったと報じられている。
12〜15歳の700人超を対象にした別の調査でも、一日あたりの平均利用時間は2.4時間から1.9時間へ減った。
一方で、年齢を偽る、年上の人にセルフィーを頼む、対象外のサービスへ移るなど、抜け道もすぐに共有された。
法律を守ると答えた割合も、12歳では54%だったのに対し、15歳では31%まで下がっている。
コモサバ:
禁止って言われると、抜け道を見つけたくなるのは、大人も子供も一緒ですね。
K子:
そこは、永遠にイタチごっごだろう。
法律が減らすのはとりあえずSNS利用なのかもしれないが、それに伴って、子供の何が改善したのか。フランスでも同じ問いが待っている。
五つ目の疑問は『豪州のデータは、果たして成功を示しているのか、それとも失敗を示唆しているのか』ということ。
そもそも、何をもって「成功」とするかの定義がはっきりしていない。
参考文献:
🚸子どもは本当に禁止に反対しているのか?
Le Mondeが13~15歳の若者に聞いた記事には、「石器時代に戻る」「友達とサッカーをする相談ができない」といった反発が登場する。
ところが、Arcomが10〜14歳の子ども1,012人に行った調査では、69%が禁止を「良い考え」と答え、67%は法律を守ると答えている。
一方で、33%は回避方法を探すと回答。64%が偽の生年月日を使い、27%は親に手伝ってもらうと答えている。
矛盾しているようだが、子どもたちの言葉を読むと、
「使いたい。でも疲れる」
「自分だけやめると、友達の会話から外れる」
「危険なのは分かる。でも悪いコンテンツを作ったのは自分たちではない」
「子どもを追い出すより、プラットフォームが危険な投稿を止めるべきだ」
やめたい気持ちと、置いていかれたくない気持ちを同時に持っている。
全員に同じルールがかかるなら受け入れられる。
だが、自分たちの声を聞かず、大人だけで決められるのは納得できないと。
コモサバ:
子供たち、揺れてますね。
K子:
六つ目の疑問は、「大人だけで決められるのは納得できない」これをどうするのかということ。
参考文献:
🏠禁止で一番困るのは、すでに孤立している子では?
「昔はSNSなんてなかった」「外へ出て遊べばいい」——SNS規制の議論では、よくこう言われる。
だが、直接会える友達が近所にいる子ばかりではない。
地方に住む、転校したばかり、病気で外出が難しい、学校で孤立している。
そうした子にとって、オンラインは暇つぶしではなく居場所や相談先になっていることがある。
コモサバ:
在仏日本人家庭にも、似たような事情がありますよね。
K子:
在仏日本人家庭では、日本の祖父母とはビデオ通話、日本の友達とはメッセージアプリで繋がってる場合がある。
また、日本語を忘れないように、日本のYouTubeも見ていたりする。
コモサバ:
それも「SNS」に含まれるかもしれないってことですよね。
K子:
メッセージ機能や動画サービスがどこまで対象になるかは、まだ不透明。
「SNSを取り上げれば子どもは現実に戻る」と単純化しないほうがいい。
現実に居場所がある子と、オンラインにしか居場所がない子とでは、同じ禁止でも失うものが違う。
七つ目の疑問は、「物理的な距離や制約があってオンラインに依存している家庭はどうするのか」という疑問。
🍷エピローグ
このように…一言でいうと、「禁止の日付は決まった。しかし、9月1日に身分証確認とBANが一斉に始まると決まったわけではない。」という状態。
今回、決まった法案の中身は疑問だらけ。
政府は8月末までに形を整えるつもりなのだろう。しかし私は、9月1日に制度が一斉に動き出すのは難しいと思う。
なぜなら、EU法が上位にあるため、そっちとの調整も必要だからだ。
最後に、Le Monde、Le Figaro、20 Minutesのコメント欄を分析してみると、
Le Mondeでは、「子どもは自分でSNS利用を制御できるのか」と、子どもの自制心を疑う声が目立った。
Le Figaroでは、国家は監視の力を自制できるのかが問われていた。
20 Minutesでは、子どものSNS利用は、親と法律のどちらが管理するのかで意見が割れていた。
さらに、コモサバがThreadsで直接尋ねると、
「禁止より対話と予防を選ぶ」
「確かに14歳だった自分にSNSは早すぎた」
「身分証も顔認証も使いたくない」
という答えが返ってきた。
もちろん、コメント欄も小さな聞き取りも、フランス全体の世論ではない。
それでも見えてきたことがある。
フランス人の多くが「子どもを守る」という目的を疑っているのではない。
でも「誰に任せ、どの手段を信頼し、どこまで介入を認めるのか」で揺れている。
🤓ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。
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