🥐第49回「フランスの人達の移民に対する意見をいろんな角度から取り上げてみる」

カメラの前では「多様性は力(建前?)」、コメント欄には厳しい批判(本音?)。街頭の声とSNSの反応を読み比べたら、移民をめぐるフランス社会の温度差が見えた。
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コモサバ
2026/11/07


パリの街角、マイクとスマホ.png.webp
AIによるイメージ画像

☕イントロダクション

今回は、コメント欄にいただいた「フランスの人たちの移民に対する意見を、いろんな角度から取り上げてみてほしい」というご要望に応えようと思いました。

ただ、いろんな角度から取り上げられたかというと、正直、自信がない。

というのも、ひとくちに「移民」といっても、フランスには本当にいろんな国から移り住んできた人がいる。生まれや育った環境も、ここに来た理由も、それぞれ違う。

「移民」のひと言でまとめるには、あまりにもいろんな人がいすぎるのだ。

なので、これから出てくる話も、移民全体に当てはまるわけではない、ということを頭の片隅に置きつつ、読んでもらえたらと思います。

✉️ このニュースレターは…

「これから、フランスはどうなっていくのか?」

既存メディアや一次資料からフランスの社会事情を読み解き、「だから今、何を考え、何をすべきか」を探るニュースレターです。

シリアスなフランス語ニュースも日本語で味つけ。蓋を開ければ「酒の肴」──そんな鯖缶のような通称「鯖刊」です。


⚱️移民に対する意見を拾うには?

移民に対する率直な意見を拾い集めるにはどうしたらいいかなーとずっと考えていたのだけれど、たぶん、匿名で、言いたいことが言える、SNSのコメント欄を見ていくのが一番手っ取り早いかと思った。

フランスでは、移民の中でも、マグレブ(北アフリカ、チュニジア、アルジェリア、モロッコなど)以外のアフリカ系の移民人口が、一番増えている。

移民は移民同士でコミュニティをつくる傾向がある。

パリでも、アフリカ人が集まる場所、ユダヤ人が集まる場所、アジア人が集まる場所など、様々なコミュニティが形成されているが、下の画像のようなアフリカ人コミュニティを紹介した動画があった。

この動画では、移民は、結構長い間フランスに住んでいるが、フランスの事を以外になにも知らない、ということを確かめてみよう!という企画で街頭インタビューをする動画である。

この動画はちょっと長いので、かいつまんで説明すると、インタビュアーは、ランダムに通りすがりの人に、フランスの「国の標語(国のモットー)=devise(ドゥヴィーズ)」は何?とか、フランスの正式名称は?など、フランスについての簡単な質問をしていく。

つづきの切り抜き動画はこちら👇


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もともとの動画はこちら👇30分と結構長い。


フランスの「国の標語(国のモットー)=devise(ドゥヴィーズ)」は、「リベルテ・エガリテ・フラタニテ(Liberté, Égalité, Fraternité=自由・平等・友愛)」なのだが、みんな以外に答えられない。

しかし、それはどうでも良くて、今回はこれについてのコメントに注目してみる。

YoutubeとTikTokのコメントをAIに分析してもらった結果、

この動画を見た人たちはフランスの移民(ここでは一部だが)に対してどんな意見を持っただろう?ここに興味が湧いた。

しかし…。最初に一番多かったのが、

移民について意見を述べるというより、動画の出演者の言い方や珍回答を面白がっているコメント。つまり、移民に関しては何も言っていない。

あとは単に、クイズに回答しているコメントなども、意見とは言えない。

ま、この動画自体がそういう趣旨なので、それは仕方がない。

それらを除いて、コメントの趣旨を多い順に並べてみると、

①社会保障・お金目当てという非難や皮肉 12.3%

つまり、「彼らは生活保護や給付金のことなら答えられる」「お金にしか関心がない」といったコメント。

②移民への拒否感・排除を求める発言 11.1%

「帰国すべき」「受け入れを制限すべき」「ここはもうフランスではない」。人種を理由にした拒否的な発言。

③知識・統合努力の不足への批判 10.5%

「27年も住んでいて、標語も知らないの?」「住んでいる国を知ろうとする努力は必要」といったコメント。

④短い驚き・失望・否定的な感想 8.4%

「本当に恥ずかしい」「悲しい現実だね」といった感想

⑤取材・編集方法や動画の目的への批判 7.0%

「撮られたくないと言った人まで、なぜ映すの?」「大学の前で聞けば、違う答えになるでしょ」といったような意見。

⑥フランス人・海外在住者にも同じことが言えるという反論 5.7%

「フランス人でも答えられない人はいる」「アフリカに住むフランス人は、現地の標語を知っているのか?」といったコメント

⑦生活事情を考慮する擁護・知識で判断することへの疑問 3.2%

「彼らは仕事、家、睡眠の繰り返しで、本を読む時間もない」「標語を知っていることが、そんなに大事なのか?」という意見。

⑧フランス社会・政府・植民地関係への批判 1.9%

「フランス自身が自由・平等・友愛を守っていないじゃないか」「フランス側の標語は、奴隷制・植民地支配・新植民地主義?」などというコメント。

⑨街のごみ・汚れへの感想 1.9%

「道の汚さにびっくり」「どうしてこんなにごみが落ちているのか?」といった感想。

これらは、TikTokで1806件、Youtubeで783件のコメントのうち、折りたたんであるもの、絵文字だけ、明らかに感想だけ(ブラボーだけとか)を除いた、628件での内訳。

そして上位に位置したのは、彼らに対して批判的な意見が多かった。

なかなか厳しいな、というのが私の率直な感想。


💊フランスの多様性はメリットだと語る老夫婦の動画

次の動画は、「移民は毒か薬か」と問いかける動画。

女性は、異文化との混交や多様性は社会を豊かにする「薬」だとしつつ、量や度合いを誤れば「毒」にもなると指摘。しかし、概ね移民には賛成派。

男性は、移民が安価な労働力として利用され、フランス人が避ける仕事を支えている現状を説明する。だから、彼らがいないと大変だよと。

この動画に寄せられたコメントは7千件以上。そのうち、2440件以上のコメントはフェイスブックからとある。

今回はそのうちの、2683件をAIに分析してもらった。

結果は、、、

①夫婦への批判・揶揄 36.0%

「現実から完全にかけ離れた左派の年寄りたち」「この人たちが自分の家で受け入れればいい」、などなど。残念なら一番多かったコメントは、このご夫婦に対する批判。

②夫婦への支持・共生への賛同 24.7%

「この夫婦は素晴らしい。共に暮らすことに勝るものはない」「この人たちは完全に正しい」など。反対に、夫婦の考え方や人柄を称賛、移民の貢献を評価するコメントも2番目に多い。

③絵文字だけ、もしくは明確な意思を示すコメントではないもの 20.6%

拍手の絵文字のみ、笑いの絵文字のみなど。何を笑っているかは不明だし、コメントとしてどちら寄りかわからいものも多数。

④取材者・極右・排外主義への批判 12.8%

「この記者は本当にずるい」「自分も移民にルーツがあるのに、どうして人種差別主義者になれるの?」など。いかんせん、このインタビュアーが、どうしても右寄りで有名なため、コメントに影響が出ている可能性も無くはない…。

また、この動画で、インタビュアーが母親がコロンビア人、父親がフランス人で、自分も混血だ、といい、流暢なスペイン語を披露している。

⑤移民の受け入れ方・影響への議論 5.9%

「移民には賛成。ただし管理された移民に」「統合するなら問題ない」など。受け入れ制限、統合、治安、雇用・賃金などへの意見もあった。


う~ん、匿名で、言いたいことが言えるとなると、こうなるのか?


🎸リヨンの若者の意見に批判


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リヨンで、通行人に「フランスにおける移民は問題か」と尋ねる街頭インタビュー。

たぶん、これはやらせではない。

彼は気軽にインタビューに応じたのだと思う。

ここで、この若者は、「僕には移民の友達もいるけど、移民が増えすぎると、そりゃー問題も起こるよね。」「例えば、アルメニア人とか、カトリックの国から来てる人は、同じカトリック同士、なじみが早いけど。」など、かなり率直な意見を述べている。

これに寄せられたコメントは365件とあるが、拾えたのは、163件。これを分析してもらった。

①宗教・歴史・統計などへの指摘・反論 30.7%

「アルメニア人は(カトリックじゃなくて)正教徒だ」「黒人にもキリスト教徒はいる」など、アルメニア人の宗派、「ユダヤ・キリスト教的ルーツ」、移民の割合などへの指摘が一番多い。

これは動画の中で「移民と言っても、ユダヤ・キリスト教の国からやって来た人は、なじむのが簡単だ。彼らは僕らと似てるから。」というセリフがあるからだと思う。

②移民をかばう意見・問題の原因はほかにあるという意見 25.2%

「移民がいなければ、あなたたちは立ち行かない」「治安の悪化は移民ではなく、貧困から来る」という意見。

これは、彼が動画の中で、「フランスは移民を受け入れてきたけど、超過は超過、それはそれで問題を起こす。」ということを言っていることから来ていると思われる。

③発言者・発言内容への批判 20.9%

「彼の分析は出来がよくない」「これぞ、隠すことすらしない人種差別だ」など、発言者の説明や論理への批判、人種差別・極右的な姿勢だとする非難、皮肉などのコメント。

これは、動画中で、彼が、「移民の中にはいいやつばかりじゃない、っていうと、僕が誰を指してるか、それは、あなたが想像してる「や・つ・ら」ってことじゃないよ(笑)」と言っている場面があるから。

これは確かに『いいやつばかりじゃない=あなたが想像してる「や・つ・ら」=アフリカ系・アラブ系移民』と逆説的にとれるのだ。

④発言への支持・移民受け入れへの懸念 14.7%

「彼は完全に正しい」「きちんと教育が施された移民なら受け入れてもいいよね」のようなコメント。発言への賛同、RN(極右)への支持など。

その他、絵文字のみ、アカウントへの言及、何を指すか不明な短文、話題外などが、8.6%


ここでいう批判は、「アルメニア人の宗派が違う」「黒人にもキリスト教徒はいる」という反応で、知識の間違いを指摘する批判だったということ。

もしくは「何をもって『僕らと似ている』と判断するのか」、宗教や出身によって、なじみやすい人となじみにくい人を分ける考え方にも反発が集まっている。


🎬フランスのコメディ映画は移民推進のプロパガンダだ、という意見に対しては?


これは、

フランス映画は移民を「善良で有能」、フランス人を「無知で差別的」に描いている。目的はフランス国民の罪悪感を刺激し、多文化共生を強制的に受け入れさせることだ、というかなり強い主張の動画。

ここで紹介されている、『Intouchables(最強のふたり)』という映画内の描写は現実の社会問題と乖離している、これはフランス映画のプロパガンダだ、という例として紹介。

現実の治安悪化や移民の統合拒否といった現実は無視され、過去のスペインやポルトガルからの移民と異なり、現在の移民は同化を拒む。

企業や政治的エリートは国民の安全よりも、そんなに「多様性」が大事なのか?など、かなりフランス社会に「同化しない」移民批判が満載の動画だ。

これに対して、フランス人はどんなコメント(反応)をしているだろう?


①動画作者の意見に賛成 23.8%

「あなたの分析に100%同意!」「よくぞ言ってくれた、すべて的確で筋が通っている。私も同じ意見!」など。

②映画そのものではなく、 その制度・助成金・業界・政治への意見 20.7%

「CNCというフランスの映画支援機関から多くの助成金を受けて、こうしたつまらないコメディー映画が作られている。しかも、そのお金の一部は映画のチケット代などから集められている。自分が払ったお金をこんな映画に使われるのが嫌なので、もう映画館には行かない。」

といったような、その財源となる映画関連の負担金に対する批判。

投稿者は、自分たちが支払ったお金でつまらない映画が作られていると不満を述べているわけだ。

③映画の内容を説明したり、質問したりするコメント 19.6%

「『Intouchables(最強のふたり)』と移民にどんな関係があるのか分からない。オマー・シー演じるドリスは、セネガルにルーツがあってもフランス人だよね」、「サミュエル・パティの最期の日々を描いた映画『L'Abandon』について、あなたが分析してくれたら興味深いのに」といったコメント。

動画自体へのコメントではなく、動画内で紹介されている映画について言及したもの。

④映画そのものへの悪口や批判 15.2%

「個人的には『Intouchables(最強のふたり)』は非常にひどい作品だ。メディアが傑作として持ち上げた駄作」、「『Intouchables(最強のふたり)』はクソ映画!」 など。

⑤移民・多文化共生・人種・国民性への意見 9.2%

「彼らと私たちでは文化が違う。私たちは相容れない」、「外国から人を呼び寄せる義務はない。それは社会としての選択だ」 といった意見。

⑥作者・出演者・映画関係者への嫌悪や悪口 6.1%

「注意して。オマー・シーと共演した友人がいるけれど、彼は画面上ではとても感じがいいが、裏ではひどい人だ」、「説教ばかりするあの2人の俳優が大嫌い!」など。

映画好きな人は、どちらかと言うと映画の話に寄っていくのは必然。

⑦動画作者の意見に反対・反論 5.4%

「あなたはでたらめを言っています」 、「この動画とコメントを見て、短絡的で一面的な説明が多いと感じました。」など。

この結果で驚くのは、動画の趣旨に賛成は、23.8%いるのに対し、反対は5.4%、賛成意見の数は1位、反対意見の数は最下位…。


🍸エピローグ


これは、移民に対する意見を聞く路上インタビューの動画だが、最初の出だしをみてみると、みんな嫌がって断っている。

質問は、法務大臣ジェラルド・ダルマナンが、合法移民を2〜3年間停止する案を提案し、それについてフランス人の67%がその案に賛成していると紹介、それに対してどう思うか?というもの。

この動画に現れたコメントを見てみよう。

①「現実を知らない」「パリはフランス全体を代表しない」「別世界に住んでいるような人の話が、ずいぶん聞こえてくる」など批判的な意見 45.6%

②今の社会は移民が多すぎる、治安や文化への悪影響がある、「全部閉めるだけでは足りない。追い出すことも必要だ!」という意見 19.6%

③ 人手不足と失業、安い労働力、年金問題、「失業率が7%以上あるのに、必要なのは働き手より仕事だろ!」といった意見 17.5%

④何を指すのか不明な相づちや感想、絵文字だけなど 12.6%

⑤移民の貢献を認める意見、移民をかばう意見・動画や他のコメントへの反論、「移民のおかげでフランスが成り立っていると分かっているはずだろ?」など。 4.6%

やっぱり結果は前回の動画と同じ。もっとも動画の製作者は左右どちらよりでもない。しかし、やっぱり移民批判のコメントが多数。

匿名で書けるコメントでは、残念ながら移民反対、しかも、アフリカ系、アラブ系、ムスリムなどに批判が集中している気がする。

文化の多様性は良いことだ、と言うのは、カメラの前だけ、それがやっぱりフランス人の本音かなと。




🤓ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。

移民に対しての率直な意見、意外にフランスでは(日本に比べて)公には言いにくいのかな、という感覚がある。

ごくごく親しい友人や、家族には本音を言うかもしれないが、私が同僚に尋ねたとて、本音を返してくるかどうかはわからない。

若い人は特に、移民批判は「カッコ悪い」「古い考え」といったような雰囲気がある。

もちろん、年配者よりは移民に反対と思っているわけじゃない若者の方が多い気もする。

しかし、今回コメント欄を追ってみて、そこでは一貫して「移民批判」が蔓延している。いや、「移民は受け入れよう。」なんて意見ははっきり言ってごくごく少数派だ。

どんな人がコメントしているかも、もちろん関係するだろう。そこまでくわしく追及できてなくて恐縮だが、フランス人の本音は少し垣間見えた気がする。

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